田中
ではパティシエを志したのはいつくらいからですか?
吉国氏
仕事としては、就職を気にし出してからですが、小学校も中学校も卒業文集に将来の夢には
「お菓子屋さん」が必ず入っていました。
子供の頃の夢が仕事になったラッキーな一人だと思っています。
田中
高校を卒業されてからは?
吉国氏
高校の時点では就職はこれで!というのを決めていなかったので、自分が女性という部分も含めて食の勉強をしたいと、
食物栄養科のある短大に進学しました。
仕事として「お菓子の仕事がしたい!」と決めたのは短大の時ですね。
田中
短大の頃にお菓子屋になりたいと決められたんですね。
で短大を卒業されてからは?
吉国氏
東京の「エスワイル」という老舗のフランス菓子店に就職をしました。
そこで3年お世話になりました。
田中
修業時代の事なんですが、「エスワイル」さんはどうでした?
吉国氏
同期で私を入れて3人女の子が居まして、私たちが入るまでは本当に男性だけの職場だったので、何て言うか神聖な場所で、
私たちが入っていいんだろうかという「ピリッ」とした空気があったんです。
でもそれが良いプレッシャーでした。
ましてや東京も初めて、修業しているという実感がありました。
ただ、今の人達には分かりにくいかもしれませんが、私の場合は「専門学校」じゃなくて「短大」じゃないですか。
私以外の2人は製菓などの「調理師専門学校」を出ていたんです。
私はそういう専門の勉強をしていないのに、修業先では同じスタートラインに立たせてもらえた時に、確かに厳しかったですけど、
お菓子作りはそれまで趣味だったので、好きなことで仕事をしてお金を貰っていいんだろうかと思っていました。
田中
きついとか辞めたいとかはなかったんですか?
吉国氏
最初は計量ばかりでしたけど、計量をさせてもらえるのも「お菓子屋で働いているんだ!」とすごく嬉しくて、
だから今、すぐ辞めちゃう子もいるんですが、それが逆に理解出来ないんです。
就きたい仕事に就ける喜びってやっぱりありますよね?
そして逆に下積みがあるからこその喜びもあって、すぐに何でもさせてもらえないからこその実感と言うか、
先輩を見ながら「私もいつかあんなに出来るようになるのかな‥‥」とワクワクしていました。
田中
その3年間は楽しかった事のほうが大きかったんですね。
吉国氏
そうですね。
ただ、同期も1年以内にみんな辞めてしまったので、仕事は大変になりましたが、それはそれで達成感がありました。
そしてたぶん「エスワイル」の特徴的な所が、私たちの頃まででしたけど新人は「まかない」を作るんです。
2年間は「まかない」を作りながらお菓子を作っていた記憶があります。
毎日3食です。
朝昼晩、売場の方の分まで食事の買出しも行って。
お菓子では修業だからあまり褒められる事はないけど、食事では喜ばれることもあり、スタッフとのコミュニケーションも取れて仕事的にも良かったです。
田中
そして3年間修業された後に、何故海外に?
吉国氏
テレビの影響ですけど、子供の頃から西洋に憧れがありました。
エスワイルで修業している頃に、アメリカで寿司ブームが起こって、テレビで金髪の人がお寿司を握っていたんです。
その時に「この人は日本のご飯とかお寿司とか実際に食べた事あるのかなぁ」と思って、私もエスワイルで洋菓子を作っているけど、実際ヨーロッパではどんなお菓子を食べたり、作ったりしているのだろう?
実際、生活の中のお菓子を知りたいと思いました。
だから、旅行じゃなくて生活をしてみたいと思ったんです。
少しずつ、お金をためて親を説得しつづけました。
最初にスイスに行ったのは、「20年くらい前にエスワイルで修業していた方が国際結婚をして、スイスに住んでいる」
と社長から伺って、どうしたら海外に行けるかたずねました。
最初に「まず言葉だよ英会話できる?」って聞かれて、
「まずフランス語を聞く環境にしないと覚えられないし、いくらお菓子が作れても、言葉が出来ないとこっちでは通用しないよ。
まず現地に行って言葉を勉強しながら仕事を見つける事をしないと、日本で勉強して行ってもしゃべれないんだから」と。
それで納得しました。
田中
スイスではお菓子屋に?
吉国氏
私は仕事が見つかるまで4ヶ月かかりました。
語学学校で勉強しながら履歴書を持って、お菓子屋さんというお菓子屋さんに行くんですけど・・・。
アジア人だし言葉もしゃべれないので、相当断られました。
4ヶ月目でやっと「いいよ」と言ってくれたお菓子屋さんが見つかり、そこのお店には約1年ほど居たと思います。
それからレストランに1年弱居ました。
お菓子はフランス菓子よりスイスの方が地味で、スイス菓子はもっと素朴なんです。
それはそれで基本だし、良かったんですが、やっぱり最後はパリに出たいと、パリの華やかなお菓子も見たいと思って、
最後1年はフランスに行きました。 |